自然保育
乳幼児期に必要な教育として、非認知能力が注目されています。
非認知能力とは、社会情動的スキル。
目標の達成・他者との協働・情動の制御、これら3つに関わるスキルとされており、端的に言えば「生きる力」と言えます。
幼児期に培った非認知能力が一生のベースとなります。
では非認知能力を高めるために何が必要かというと、有効な方法の1つに自然体験が挙げられます。
幼児教育の基本は「環境を通して行うこと」です。
子どもが主体的に働きかけ、そこから様々な学びを得られるような環境が理想とされます。
東洋大学の高山先生は豊かな環境として、下記の5つのポイントを挙げられています。
①応答性があること
②多様性があること
③見立てやすさがあること(想像や創造のしやすさがあること)
④挑戦できること
⑤適度な刺激量(色・音・臭い等)があること
これらすべてを満たしてくれるものが自然物にあふれた森のような環境です。
このような考えに基づいた保育は、「自然保育」や「森のようちえん」というカタチで全国的に広まりつつあります。
そして、動物園はここに大きく関わることができるのではないかと思います。
ふれあいなどを通して動物と直接的に関われば、もちろん応答性がそこにはあります。
多種多様な生き物が暮らす動物園は多様性に満ち、関心の高い生き物を集中して見ても良いし、イベントにたくさん参加しても良いし、楽しみ方も多様です。
動物の姿や行動を見て身近な誰かをイメージすることもあるでしょう。
自分より大きな動物、質感の異なる動物、初めて出会う動物に接近する、あるいは触れるという行為は大きな挑戦と言えます。
目の前の動物の鮮やかな体色・文字では表せないような鳴き声・離れていても香ってくるニオイ…図鑑や動画からは得られない刺激に溢れています。
展示動物に限らず、野鳥・昆虫・山野草も自然保育の要素に含まれます。
都市化が進みまわりの自然環境が減少しつつある現代では、動物園で催される野鳥観察・昆虫採集イベントなどは貴重な機会かもしれません。
また、自然保育を推し進める上では、地域の保育施設や保育グループ・子育てサロンなどに、動物園が保育の場を提供するような協働の仕方もあると思います。
これは地域の教育力・魅力向上、社会全体で子育てに参画するといったことに繋がります。
動物園が保育の分野に力を入れること、自然保育に取り組むことに意義が感じられます。
〈参考文献〉
公益社団法人 国土緑化推進機構 編(2018) . 『森と自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック』 . 風鳴舎 .